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急転直下の初恋

それは、とある日の、日常の変革点

このSSの掲載にあたり、同時に描出した浅沼・蛟(b68295)に関しては背後様の許可を頂いております
また、少々アンオフィシャルを含む内容でありますので、閲覧は各自の責任においてお願いします




突発的に、みんなを集めて茶会を開きたくなることがある
どうして、と問われても理由なんかあやふやで、ただ「みんなと話したかった」ということが多い
その夜もそんなパターンの日で、そして、もしかしたら自分はこうなることを求めていたのかもしれない、と、後になってみれば思う

唐突に茶会のお知らせがあるのは珍しいことではない
常連なら、いつもどおりに顔を出し、そのまま茶会で談話を楽しんでいくものもいるし、たまたま行きあわせて、顔を出していくバイトもいる
ただ、その日は明確な目標があって参加したのだが、ある意味、こうもトントンと物事が進んでしまうと後になれば少々怖いところもある


レンテンシアが書庫で茶会の用意を終えたころ、顔を出したのは蛟だ
Gothicの中では一番の新顔だが、レンに懐いてちょこちょこと仕事の手伝いをして、その腕前を買われて、レンにも可愛がられている未来の副店長候補である
「こんばんわ、レンさん」
「いらっしゃい、蛟くん」
挨拶を交わして、席に着く
つまらないことをぐだぐだと話しているうちに、いつもの常連をはじめとするメンツが揃い始めて、茶会は賑わい始める
皆が話していることをニコニコ笑顔で聞きながら、レンは喫茶店マスターらしい気配りで、空いたマグカップにおかわりを注いだり、少なくなったお茶菓子を足したりしている
その所作を見ながら蛟がマジメにメモ書きなどしているのは、自分がGothicにとって重要なメンバーだと分かっているからなのか、それとも他に何か思惑があるのか
時折、手が足りなくなるとレンは蛟を呼び、あれこれと言いつけては使い走りにしているのを見ると、レンとしても蛟は大切な「店員候補」のようだ
喫茶店のほうはとうに閉店状態で、茶会も時間を見て解散となる
日付が変わり、少し過ぎたころからぽつりぽつりと人影が減り始める
レンは帰る者を見送り、不要になったマグカップや菓子皿を手早く洗い、棚に片付けていく
蛟もそれに追随し、机に放置されているマグカップなどを運ぶ
そんなことをしているうちに、気がつけば、書庫に残っているのはレンと蛟だけになってしまう
「蛟くん、まだ帰らなくていいの?」
かちゃかちゃと食器を洗いながら、レンは蛟に声をかける
「んー、手伝うことがあれば、もう少し勉強してから帰りたいです」
「よしよし、いい心がけだ、なら、ちょっと食器を洗ってもらおうかな」
「はい、わかりました♪」
ボクは、明日の分の仕込とかをやっつけちゃうよ、と言いながら、レンは手を拭き、シンクを離れる。
「あ、これ、エプロンねー」
「あ、はい、ありがとうございま、す」
着の身着のままシンクに向かう蛟に、寸でのところでレンがエプロンを投げ渡す
寸前までレンが身に着けていたそれは、幽かに体温が残っており、受け取る蛟の顔がわずかに朱に染まる
「服、汚すのはもったいないからねー」
にへら、と笑うレンの顔にはまったく邪気がない
『……やっぱり、僕が意識しすぎなのかなぁ』
服の袖をまくり、シンクに置かれた汚れ物の食器に手をかけながら、蛟は思う。
自分がこの喫茶店に出入りするようになった契機といえば簡単なもので、最初は匂いにつられたのだ
銀誓館からの家路、その途中にある、新しく出来た喫茶店、そしてそこからわずかに染み出る、珈琲や紅茶の格式高い香り
もとより紅茶を好む蛟はふらふらと喫茶店のドアを叩き……
そして、そのドアの向こうで微笑んでいたレンの姿を見て、一目ぼれしてしまったのだ
「はぁー……」
「溜息つくと、幸せが逃げちゃうよ、蛟くん」
「はい……はぁあ」
だが、目の前にいる初恋の相手は自分の心のうちなどまるで考えていないのだろうな、と思うと、思わず溜息の漏れる蛟である
「……さっきから、溜息ばっかりついてどうしたのですか?」
とん、と足音が聞こえた、と蛟が思ったときには、もう、レンの腕の中に抱きしめられた後だった
「心配事とか、悩み事があるのなら、ボクに相談するといいのですよ?」
「え、あ……レンさん?」
「お茶会に出たり、この喫茶店に来るのなら、ボクは、なるべく、来る人すべてに笑顔でいて欲しいのです、それは、蛟くんでも例外ではないのですよ?」
「……」
「だからですね、蛟くん、溜息をつく前に、ボクに必ず相談するのですよ」
それだけ言うと、レンは腕を解く
そのままコツン、と足音が一つ
『……のがしちゃ、だめだ!』
蛟は、本能の奥底のその声に従い、振り返りながらレンの腕を掴む
「……どうしたのですか?」
きゅ、と腕をつかまれ、レンは怪訝そうな表情で蛟に聞く
「……大切な、話があるんです、レンさん」
「……それを聞いて、蛟くんが元気になるのなら、いくらでも相談に乗るのですよ?」
怪訝な表情から一転、レンはいつもどおりの締まらない笑顔を浮かべ、蛟の瞳を覗き込む
「……レンさん、真剣に聞いてください」
「……そんなに不真面目に見えるかな?」
「レンさん……僕は、僕は……っ」
口をパクパクさせて言いよどむ蛟をレンは不思議そうな顔で見るが、促しもせず、ただ見つめるのみ
「僕は――
 
 レンさん、初めて見たときから、あなたの事が、好き、なんです!」
蛟が全力を振り絞って言葉を放った後、書庫を静寂が席巻した
シンクで水が滴る、小さな音だけがやけに響き渡る
「……うに?」
レンが、目を点にして首をかしげる
「どーいうこと?」
自分の思いの丈をこめた言葉に対する反応に、思わず蛟はカっとなった
「……こーいうことです!」
レンの腕を強く引き寄せ、頤に残る片手をかける
え、え、と混乱するレンのことなど何も考えず、ただ彼は――
――――――ちゅっ
唇と唇を触れ合わせることだけを優先した
「……レンさん、僕は、本当に、あなたの事が好きなんです」
「え、あぇ…………か、えして……」
「え?」
「返して! ボクのファーストキス! 返して!」
「返してって……」
「なんで、なんでぇ……返してよぉ」
ぐしゃぐしゃになって涙すら流し始めるレンを見て、嗜虐心をそそられたのか、蛟は僅かな高揚を表情に混ぜて、再びレンの頤に手をやる
「……ぁ」
僅かに開いたレンの唇
愛しいと感じるからこそ、2度目のキスは長くなった
「……」
「……涙の、味がしました、レンさん」
「…………」
「ごめんなさい、勝手に思いをぶつけて、勝手に癇癪を起こして、勝手にファーストキスも奪っちゃって」
「………………」
「勝手が、過ぎますよね……好きになって欲しいなんて、都合がよすぎますよね……嫌われても、しょうがないですよね」
「……………………」
「ごめんなさい、もう、ここには、来ません……これまで、ありがとうございました」
レンの腕を離して、蛟は一歩、後ろに下がる
扉までの距離は、数歩とない
放心してしまっている最愛の人から逃げ出すことは、蛟にとって簡単なことだった
「……なに、勝手に逃げようとしているのですか?」
だが、その一言が蛟の足をその場に引きとめた
「え、でも……僕は、レンさんのことを考えずに……」
「うん、それは、ボクも怒りたいところ、だけど、言いたいことだけ言って、そのまま逃げるなんて、許さないのですよ?」
「……」
「さっきの答え、聞きたくないのですか?」
「……聞きたい、です」
「――」
パァン、とレンの手のひらが蛟の頬を打った
「あ……」
振られた、玉砕した、叶わなかった
そんな言葉が蛟のうちにあふれた瞬間だった
「これで、さっきのキスの分は、なしにしておいてあげるのです」
「……え?」
「これから、キスしたいときは、前もって言うのですよ」
「……それって……」
「――まさか、喫茶店を立ち上げたら、恋人さんが出来るとは思ってなかったのです」
「…………」
「ボクで、本当に後悔しませんか? いまなら、平手もう一発で、さっきのこと、全部なかったことにしてあげるのですよ?」
「……後悔なんて、しません、するわけがありません!」
「そう……ね、蛟くん」
「はい、レンさん?」
見つめあい、一息の間が空く
「親愛の証……ボクのこと、レンって呼んで、ボクも蛟くんのこと『みずちー』って呼ぶから」
「はい、レンsっ……レン」
「うん、それでいいのですよ、みずちー」
ちょっと目、瞑って?
レンの言葉に、蛟は素直に従う
――お互いの合意の上でのキスは、息の続く限り、長く
これからはじまる、二人の日々を思いながら

   急転直下の初恋 To be continued After Days...
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レンの日常 | 2009'08.12 00:10 | 固定リンク | PageTop↑

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